2012年06月05日

第48回 ~発達障害の薬物療法について~

発達障害にみられる症状は、大きく分けると次の2つに分類されます。

・中核症状:ADHDの不注意・多動衝動性、広汎性発達障害の対人面の問題やこだわり、学習障害の学習上の問題といった診断基準に記載されている症状。

・随伴症状:チック、てんかん、睡眠障害(入眠困難・夜驚症・夢中遊行症)、排泄障害(昼間遺尿症、夜尿症、遺糞症)、心身症的症状(頭痛、腹痛、嘔吐、OD、四肢痛など)、精神症状(不安・抑うつなど)といった診断基準に記載されていないが、中核症状に付随してみられる症状。

中核症状の中で、ADHD症状(不注意・多動衝動性)に対してはこれまでお話してきましたコンサータやストラテラといった薬剤が有効です。広汎性発達障害や学習障害の子どもさんに併存するADHD症状に対しても、これらの薬剤がしばしば用いられます。しかし、ADHD以外の中核症状である広汎性発達障害のこだわりや学習障害の学力不振に有効な薬剤は、残念ながら今のところ存在しません。アメリカでは、自閉症のパニックに適応のある薬剤が承認されていますが、いずれにせよ根治的な効果はないと思われます。

一方、随伴症状は、定型発達の方にもよく見られる症状で、発達障害の有無にかかわらず、基本的には提携発達時も発達障害児もお薬などによる同じ治療が行われます。
つまり、発達障害の薬物療法は、ADHD症状に対する薬物療法以外の随伴症状はその症状に対して行われるもので、発達障害だからといって特別な治療を行うことはありません。

次回は、コンサータやストラテラ以外の他の向精神薬についてお話しします。

(2012/6/1びぃめ~る86号 小児神経科医 宇野正章)



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